ADHD・注意欠陥多動性障害の症状と治療について

ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)、日本語で「注意欠陥多動性障害」は、主に子どもに見られる神経発達障害の一つですが、大人になっても症状が続くことがあります。本記事では、ADHDの特徴、原因、診断、治療法について詳しく解説します。

ADHDの主な特徴

ADHDの主な症状は以下の3つのカテゴリーに分けられます。

1. 不注意

ADHDの不注意症状は、日常生活や学業、仕事において様々な形で現れます。以下に具体的な例を挙げます。
• 細部に注意を払えない:課題や仕事で不注意なミスを頻繁にします。たとえば、書類の誤字脱字や、計算間違いが多いです。
• 注意の持続が難しい:勉強や会議など、長時間の集中を要する活動で注意を維持することが困難です。約15~20分以上の集中が難しい場合があります。
• 話を聞いていないように見える:直接話しかけられても、他のことに気を取られているため、相手の言葉が頭に入っていません。
• 指示に従えない:課題や業務の手順を忘れたり、飛ばしたりします。たとえば、宿題を提出し忘れる、仕事の締め切りを守れないなど。
• 課題や活動の整理が苦手:物事を計画的に進めるのが難しく、作業の優先順位をつけられません。
• 精神的努力を要する課題を避ける:長時間の集中が必要な課題や宿題を避けたり、後回しにする傾向があります。
• 必要な物をよく失くす:文房具、鍵、眼鏡、携帯電話など、日常的に使う物を頻繁に紛失します。
• 外部からの刺激で注意が散漫になる:周囲の音や動きに敏感で、簡単に気が散ってしまいます。たとえば、教室で窓の外に目がいってしまう。
• 日常的な忘れ物やうっかりミスが多い:約束や予定を忘れる、電車を乗り過ごす、料理の火を消し忘れるなど。
発症率:ADHDは学齢期の子どもの約5%に見られ、そのうち不注意が主な症状のタイプは全体の約20~30%を占めます。成人ではADHDの有病率は約2.5%と報告されています(American Psychiatric Association, 2013)。

2. 多動性

• 落ち着きがない:座っているべき場面で立ち上がったり、席を離れたりします。
• 過度に走り回ったり登ったりする:場にそぐわない行動を取ることがあります。
• 静かに遊べない:音を立てずに遊ぶことが難しい。
• 常に動いているように見える:エネルギッシュでじっとしていられません。
• 過度なおしゃべり:話し続け、周囲の人を困らせることがあります。

3. 衝動性

• 質問が終わる前に答える:相手の話を最後まで聞かずに口を挟みます。
• 順番を待てない:列に並ぶのが苦手で、割り込んでしまうことがあります。
• 他人の活動を邪魔する:会話やゲームに無断で参加したり、他人の所有物を勝手に使ったりします。

原因

ADHDの正確な原因は未解明ですが、以下の要因が関与していると考えられています。
• 遺伝的要因:ADHDの子どもを持つ親や兄弟姉妹もADHDである可能性が高く、遺伝率は約76%とされています。
• 脳の機能異常:前頭前野の活動低下や、神経伝達物質(ドーパミン、ノルエピネフリン)の不均衡が関与しています。
• 環境要因:妊娠中の喫煙、アルコール摂取、低体重出生、鉛などの有害物質への曝露。

診断

診断は専門の医療機関で行われ、以下の手順を踏みます。
1. 問診:症状の詳細、発症時期、生活への影響を確認。
2. 行動観察:学校や職場での行動パターンを評価。
3. 心理検査:知能検査や注意力のテストを実施。
4. DSM-5基準:アメリカ精神医学会の診断基準に基づく評価。

治療法

ADHDの治療は、薬物療法と非薬物療法を組み合わせて行うのが一般的です。

薬物療法

• 中枢神経刺激薬:メチルフェニデート(コンサータ)
コンサータ(メチルフェニデート)
コンサータは、成人のADHD症状に対して高い有効性を示しています。臨床試験の結果によれば、コンサータを使用した成人患者の約60~70%で症状の改善が見られています。
*コンサータ処方のためには、コンサータ処方医の資格が必要です。当院は4名コンサータ処方医が在籍しているので処方可能です。

改善率:約60~70%の患者で症状の有意な改善
参考研究:Medori et al., 2008:この研究では、コンサータの使用によりADHD症状が有意に改善したと報告されています。

• 非刺激薬:アトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン(インチュニブ)など。
アトモキセチンも成人のADHD治療に有効であることが示されています。臨床試験では、約50~60%の患者で症状の改善が報告されています。
改善率:約50~60%の患者で症状の有意な改善
参考研究:Michelson et al., 2003:この研究では、アトモキセチンがプラセボと比較して成人のADHD症状を有意に改善したことが示されています。

非薬物療法

・環境調整:特性にあった職場環境を選ぶこと
• 認知行動療法(CBT):行動の調整とスキルの習得。
• ソーシャルスキルトレーニング:社会的なスキルの向上。
日常生活での工夫
・優先順位をしっかりつける:マルチタスクを優先順位をつけて少しでもシングルタスクに近づける
• スケジュール管理:カレンダーやリマインダーを活用。
• 環境の整備:集中しやすい環境を作る。
• 短い休憩を入れる:長時間の作業を小分けにする。

大人のADHD

成人になっても症状が続く場合、仕事や人間関係に影響を及ぼすことがあります。成人のADHD有病率は約5%とされています。

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