自分でできる段階的暴露療法：不安や恐怖を克服するためのステップガイド

【はじめに】
高所恐怖や人前での緊張、不特定の不安など、日常生活を妨げる恐怖や不安に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
「段階的暴露療法*」は、不安や恐怖を徐々に体験して慣れることで、回避行動を減らし、症状を軽減する心理療法の一種です。

本コラムでは、心療内科の視点から、段階的暴露療法をセルフケアとして行うための具体的なステップや、注意点をわかりやすく解説します。
「苦手を克服したい」「少しずつ慣れていきたい」と考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

1. 段階的暴露療法*とは？

段階的暴露療法*は、不安や恐怖を引き起こす状況や物に対して、安全を確保したうえで少しずつ暴露（接触）し、「実は大丈夫かもしれない」という感覚を体に覚えさせる方法です。

具体的には、

これにより、「この状況でも案外平気かも」という身体的慣れが得られ、不安や恐怖に振り回されにくくなります。

段階的暴露療法は、医療機関やカウンセラーの指導下で行うとより安心ですが、セルフケアとして一人で取り組むことも可能です。

ただし、症状が重い場合やトラウマが深い場合は、専門家のサポートを受けるのが安全です。

以下のステップを意識して、自分に合った計画を立てながら進めてみましょう。

①恐怖や不安の「ヒエラルキー」を作る
- まず、「何に対してどの程度の恐怖」を感じるのかを整理する
- 恐怖度を10段階などに分け、低い方から高い方へリストアップ
- 例：高所恐怖の場合「1階のベランダ（恐怖度3） → 2階のベランダ（恐怖度5） → 展望台（恐怖度8） → 高層ビルの屋上（恐怖度10）」
②安全を確保したうえで、低いレベルから暴露する
- 恐怖度が低いシチュエーションから試す（10分くらいなど時間を設定）
- 「我慢すればいい」のではなく、「慣れるまで待つ」という姿勢
③慣れたら次のステップへ進む
- 同じレベルのシチュエーションで不安が下がった感覚を得たら、一段高い恐怖度の状況にチャレンジ
- 早く次へと焦らず、自分のペースを大切に
④結果や感想を記録する
- 恐怖度がどれくらい下がったのか、身体の反応をメモ
- うまくいかなかったときも「何が原因か？」を振り返り、次に活かす
⑤必要に応じて支援を受ける
- 家族や友人に付き添ってもらうなど、安全確保を優先
- 恐怖が強すぎる場合は専門家（医師・カウンセラー）へ相談

段階的暴露療法をセルフケアで行う際、以下の点に注意しながら進めると安全です。

セルフケアでの段階的暴露療法が難しい、または恐怖や不安が重度で日常生活に大きく支障をきたしている場合は、専門家のサポートを考えましょう。

段階的暴露療法*は、恐怖や不安を「徐々に体験」して慣れることで、回避行動を減らし、自分らしい行動を取り戻す心理療法です。
セルフケアとして取り組む際は、無理のないペースでステップを踏み、成功体験をコツコツ積み重ねることが大切。

もし、恐怖や不安が強すぎて日常生活に大きな支障をきたしている場合は、心療内科やカウンセリングを通じて、専門的サポートを受けながら進めましょう。
小さな一歩から始めることで、苦手を克服し、生活の質を高める可能性は十分にあります。