コロナ後遺症ブレインフォグについて:原因・症状・対策と当院でのサポート
【はじめに】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染し、回復した後も体調不良が続く「コロナ後遺症(ロングCOVID)」に悩む方が増えています。その中でも近年注目されているのが、「ブレインフォグ(Brain Fog)」と呼ばれる症状です。
「頭がモヤモヤして集中できない」「考えがまとまらず、物忘れが増えた」という状態が長引き、仕事や生活に支障をきたすケースも少なくありません。
本コラムでは、コロナ後遺症によるブレインフォグとは何か、具体的な症状や考えられる原因、日常生活で気をつけるポイント・対策、そして当院でのサポートについて詳しく解説します。
1. コロナ後遺症とブレインフォグの関係
新型コロナウイルス感染症は、回復後もしばらく体調不良が続くことがあり、これをまとめて「コロナ後遺症」や「ロングCOVID」と呼びます。
代表的な後遺症状としては、倦怠感、呼吸苦、味覚・嗅覚障害などが知られていますが、「ブレインフォグ」も多く報告されるようになりました。
ブレインフォグ(Brain Fog)とは、直訳すると「脳の霧」のように、頭の中がモヤがかかったような状態を表す表現です。具体的には、
- 集中力や思考力の低下
- 記憶力(特に短期的な記憶)の低下
- 言葉が出にくい、会話がスムーズにできない
- 判断力や意思決定のスピードが遅くなる
こうした症状によって、仕事や勉強、家事などでのパフォーマンスが著しく落ち、日常生活に大きな影響が出ることがあります。
2. ブレインフォグの症状:どんな状態になる?
ブレインフォグは目に見える病変があるわけではなく、主に本人の自覚症状で捉えられます。以下のような訴えが代表的です:
- 集中力が続かない: 少しの作業でも疲れてしまう、同じ文章を何度も読み返さないと理解できない
- 思考がクリアにならない: 「頭の中がぼんやりして、まとまった考えが浮かばない」
- 物忘れが増えた: 「すぐに言いたいことを忘れる」など、短期記憶の低下
- 言葉が出にくい: 会話中に単語が出てこず、途切れ途切れになる
- 判断・意思決定に時間がかかる: 「これでいいのかな」と迷い、決断に戸惑う
これらが長く続くと、仕事や勉強だけでなく、家族や友人とのコミュニケーションにも影響が出てしまい、自己評価の低下や抑うつ感を招く恐れもあります。
3. 原因やメカニズム:なぜブレインフォグが起こるのか
コロナ後遺症としてのブレインフォグは、まだ完全に解明されていない部分も多いのが現状です。しかし、いくつかの仮説や報告がなされています:
- ウイルス感染による脳や神経系への影響: 新型コロナウイルスが脳機能に影響を与え、神経伝達が乱れる可能性
- 免疫反応や炎症: 長引く炎症が中枢神経に作用し、思考・記憶を司る部分にダメージを与える
- ストレスや不安: 長期の療養や社会的隔離による精神的ストレスが、集中力や記憶力を低下させる
これらが複合的に作用し、ブレインフォグという形で症状が表れていると考えられています。
4. 日常でできる対策・セルフケア
ブレインフォグは、「脳の一時的な混乱状態」と捉えることができます。症状を和らげるために、セルフケアを意識してみましょう。
- 十分な休養と睡眠: 疲労がブレインフォグを悪化させる大きな要因。睡眠時間をしっかり確保し、無理をせず定期的に休憩を取る。
- 適度な運動: ウォーキングや軽いストレッチ、ヨガなどで血行を促進し、脳への酸素供給を高めると頭がすっきりしやすい。
- 脳を整理するツール: メモ帳やスマホのタスク管理アプリを活用し、忘れやすいことをすぐ書き留める。整理しながら進めると混乱が減る。
- マインドフルネスや呼吸法: 短い時間でも「今、この瞬間」に意識を向ける練習。深呼吸を2〜3回行うだけでもリラックスに繋がる。
- 生活リズムを整える: 食事や起床・就寝の時間をできるだけ一定にし、身体リズムを安定させる。
これらの方法で脳や身体をリセットし、少しずつ集中力や思考力の回復を図ることが期待できます。
5. 当院でのサポート:ブレインフォグを抱える方へのアプローチ
ブレインフォグはセルフケアで軽減できることもありますが、強い症状が続いて日常生活に大きな支障が出る場合や、うつ症状や不安障害の併発が疑われるケースでは、専門的なサポートが必要です。
当院では、心療内科の視点から以下のようなアプローチを行っています:
- 医師による診察・カウンセリング: 現在の症状や生活状況を丁寧に把握し、必要に応じて薬物療法(抗不安薬・抗うつ薬など)を検討
- 認知行動療法(CBT): 思考の整理や自己モニタリングを学び、混乱状態を減らす
- 生活リズムや食事のアドバイス: 睡眠衛生の改善や栄養指導を含め、全体的な健康をサポート
- 家族支援: 家族がどのように関われば良いのか、協力体制を整えてストレスを減らす
コロナ後遺症のブレインフォグはまだ完全に解明されていない部分も多いため、個々の症状に合わせた柔軟な対応が重要です。当院では患者さん一人ひとりに寄り添い、長期的な視点で回復を支援しています。
6. まとめ:ブレインフォグ対策で脳をクリアに
「ブレインフォグ」はコロナ後遺症の一つとして注目されており、集中力や思考力の低下などの“頭のもや”状態が続く症状です。これは医学的にも解明途中の部分がありますが、疲労やストレスと深い関係があると考えられています。
もし長引くぼんやり感や物忘れ、集中力の低下に悩んでいるなら、
- 十分な休養と睡眠を心がける
- 軽い運動や呼吸法で脳をリフレッシュ
- マインドフルネスやセルフモニタリングでストレスを適切にコントロール
- スクリーンタイムを見直し、情報過多に注意
といったセルフケアに取り組むことが大切です。それでも改善が見られない、日常生活に支障が大きいという方は、専門家の力を借りてください。当院では、コロナ後遺症によるブレインフォグのご相談にも応じています。
「いつまでも頭がスッキリしない」「集中力が戻らず困っている」と感じる方は、どうぞ一人で抱え込まずにお気軽にご相談ください。