双極性障害の再発予防:内服継続とセルフモニタリング、生活リズムの重要性

双極性障害(躁うつ病)は、気分が高揚する「躁状態」と、気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す精神疾患です。当クリニックでも、多くの患者様がこの疾患で悩まれています。今回は、内服治療の継続、気分のセルフモニタリング、そして社会生活リズムを一定に保つことの重要性について、再発率に関する具体的な数字を交えながら詳しくご説明いたします。

双極性障害とは

双極性障害は、以下の2つのエピソードを特徴とします:
• 躁状態:異常なまでの高揚感、過活動、睡眠欲求の減少、衝動的な行動などが見られます。
• うつ状態:持続的な気分の落ち込み、意欲の低下、食欲や睡眠の変化、場合によっては自殺念慮も。
これらのエピソードは数週間から数ヶ月続くことがあり、生活や社会的機能に大きな影響を及ぼします。

内服治療の重要性

-再発率と内服継続の関係
双極性障害は再発性の高い疾患であり、適切な内服治療を継続することで再発リスクを大幅に低減できます。
• 治療を継続した場合:再発率は約**20〜30%**と報告されています。
• 治療を中断した場合:再発率は**70〜90%**にまで上昇します。
これらの数字は、2020年に発表された日本精神神経学会のガイドラインに基づいています。

-内服中断のリスク
内服治療を自己判断で中止すると、以下のリスクが高まります:
• 再発の早期化:中止後数週間〜数ヶ月で再発する可能性が高い。
• 症状の重症化:再発時の症状が以前よりも重くなることがある。
• 治療抵抗性の増加:再発を繰り返すと、治療への反応が悪くなることがあります。

気分のセルフモニタリングの重要性

-セルフモニタリングとは
気分のセルフモニタリングは、自分自身の気分や行動パターンを日々記録し、変化を把握する方法です。これにより、再発の兆候を早期に察知し、適切な対処が可能となります。

-セルフモニタリングの方法
• 気分日記の作成:毎日の気分、睡眠時間、活動内容、ストレス要因などを記録します。
• 専用アプリの活用:スマートフォンのアプリを使って手軽に記録・分析ができます。
• 定期的な自己評価:週や月単位で振り返り、パターンや傾向を確認します。
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-セルフモニタリングのメリット
• 再発の早期発見:気分や行動の変化を自覚しやすくなります。
• 治療効果の向上:医師との情報共有がスムーズになり、治療プランの調整がしやすくなります。
• 自己管理能力の向上:自身の状態を客観的に理解し、適切な対処が可能になります。

社会生活リズムを一定にする重要性

-社会生活リズムとは
社会生活リズムとは、日常生活における睡眠・食事・運動・仕事・社交活動などの時間やパターンを指します。これを一定に保つことは、双極性障害の再発予防に大きく寄与します。

-社会生活リズム療法(Social Rhythm Therapy)
社会生活リズム療法は、生活リズムの安定化を目的とした治療法で、以下の要素が含まれます:
• 規則正しい睡眠・起床時間の設定:毎日同じ時間に寝起きすることで、体内時計を安定させます。
• 食事時間の固定:食事も一定の時間に摂取することで、生活リズムを整えます。
• 定期的な運動:適度な運動は気分の安定とストレスの軽減に効果的です。
• 社会活動の計画:友人や家族との交流、趣味の時間を計画的に取り入れます。

-生活リズムの乱れと再発リスク
生活リズムの乱れは、脳内の神経伝達物質やホルモンバランスに影響を与え、再発リスクを高めます。特に、睡眠不足や過度のストレスは再発の引き金となりやすいため注意が必要です。

-実践のためのポイント
日常生活での工夫
• スケジュール帳やアプリの活用:予定やルーチンを可視化し、遵守しやすくします。
• 睡眠環境の整備:快適な寝室環境を整え、良質な睡眠を促進します。
• ストレス管理:リラクゼーション法や趣味の時間を取り入れ、ストレスを軽減します。
家族や周囲の協力
• 家族との情報共有:セルフモニタリングの結果や気分の変化を家族と共有します。
• サポート体制の構築:困ったときに相談できる人を明確にしておきます。

最新の研究動向

セルフモニタリングと再発予防
2022年の研究によると、セルフモニタリングを実施した患者様は、再発率が約50%減少したと報告されています(参考:International Journal of Bipolar Disorders)。
社会生活リズム療法の効果
社会生活リズム療法を取り入れた患者様は、再発までの期間が有意に延長し、生活の質も向上したことが示されています。

まとめ

双極性障害の再発予防には、内服治療の継続だけでなく、気分のセルフモニタリングと社会生活リズムを一定に保つことが非常に重要です。これらを実践することで、再発リスクを大幅に低減し、安定した生活を送ることが可能になります。自己判断での治療中断は避け、疑問や不安がある場合は遠慮なく医師にご相談ください。

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