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パニック障害

パニック障害とは

パニック障害は、突然の強い不安や恐怖感に襲われる病気です。この状態は、特に明確な危険や原因がない場面でも起こるため、日常生活に大きな支障をきたします。パニック発作と呼ばれる強い発作が特徴で、多くの場合、心臓発作や死の恐怖に似た感覚を伴います。
パニック障害は決して珍しい病気ではなく、適切な治療を受けることで改善が見込まれます。しかし、放置すると慢性的な不安症状や、広場恐怖と呼ばれる新たな問題を引き起こす可能性があるため、早期の対応が重要です。

パニック障害とパニック発作の違い

パニック発作とは、特定の状況や明確な引き金がなくても、突然、「このまま死んでしまうんじゃないか、おかしくなってしまうのではないか」という強い不安や恐怖が込み上げ、動悸、発汗、息苦しさ、めまい、手足の震えなどの身体症状が数分以内にピークに達する一過性の状態を指します。一方、パニック障害は、こうしたパニック発作が繰り返し起こるだけでなく、「また発作が起こるのでは」といった予期不安や、それに伴う回避行動が持続し、日常生活に支障が及ぶ疾患です。すなわち、単発のパニック発作が必ずしもパニック障害を意味するわけではなく、再発性や予期不安がある場合にパニック障害と診断されます。

特に、

  • このまま死んでしまうんじゃないかと言うくらいの強い恐怖
  • 発作の始まりから数分以内でピークに達する

と言うのがパニック発作の特徴です。


パニック障害の原因(パニック障害になるきっかけは?)

パニック障害の原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が影響すると考えられています。

  1. 遺伝的要因: 家族にパニック障害や不安障害を持つ人がいると、発症リスクが高くなります。
  2. 脳内の神経伝達物質の異常: セロトニンやノルアドレナリンといった脳内の化学物質のバランスが崩れることで、発症リスクが増加することが分かっています。
  3. ストレスやトラウマ: 過去のトラウマや、極度のストレスを受けた経験が発作を引き起こすことがあります。
  4. 身体的健康状態: 甲状腺機能亢進症や心臓疾患など、身体の病気が関連する場合もあります。

パニック障害の症状

パニック障害は、予期せぬパニック発作として生じます。主な身体的・精神的な症状には、以下のようなものがあります。

  • 急激な心拍数の上昇(動悸)
  • 大量の発汗
  • 呼吸困難や息苦しさ
  • 胸の痛みや圧迫されるような感覚
  • めまいやふらつき
  • 強い恐怖感や気を失うことへの不安
  • 周囲が現実ではないように感じる(非現実感)

これらの症状は突然起こり、数分以内にピークに達することが特徴です。発作が治まった後も、強い疲労感や「また起こるのではないか」という不安が続くことがあります。

パニック発作時と落ち着いた状態の症状

症状 発作時 落ち着いた状態
呼吸 浅く速い、息苦しい ゆっくり深い呼吸ができる
心拍 急激に上昇、動悸 安定した心拍数
思考 「このまま死んでしまうのではないか」といった思考になる 客観的に状況を判断できる

パニック障害の診断方法

パニック障害の診断には、精神科医や心療内科の診察が必要です。具体的には、以下のような診断基準に基づき判断されます。

  • 繰り返し起こる予期しないパニック発作
  • 発作後、再発の恐怖や行動の変化(例えば、発作を避けるために特定の場所や状況を避ける)が3ヶ月以上続くこと

その他、身体的な原因を排除するために、血液検査や心電図検査なども行われることがあります。


パニック障害の治療方法

パニック障害の治療は、主に薬物療法と心理療法(カウンセリング)が中心となります。

薬物療法

抗不安薬

ベンゾジアゼピン系薬が短期間の症状緩和に使用されます。ただし、依存性があるため長期使用は避けるべきです。

抗不安薬

抗うつ薬

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)は、パニック障害の長期的な治療に効果的です。

抗うつ薬

心理療法

認知行動療法(CBT)

パニック発作を引き起こす不安や恐怖のパターンを変える手法です。CBTは、発作への過剰な反応を減少させ、恐怖心を和らげることを目的としています。

認知行動療法

段階的暴露療法

苦手な状況や場所に徐々に慣れることで、発作を引き起こす刺激への恐怖感を和らげる治療法です。


当クリニックでの治療の実際

  • 適応障害、うつ病や躁うつ病 、身体疾患などのその他の疾患によるパニック発作を除外します。
  • 基本的には抗うつ薬(SSRI)を投与し、4週程度経ってから、段階的暴露療法を開始します。
  • 症状が落ち着いてくるまでは、抗不安薬も併用します。
  • 不安な状況に慣れるための暴露は、スモールステップ・ベイビーステップで本当に少しずつ行っていきます。
  • 構造化する必要がある場合は不安階層表を用います。

パニック障害におすすめの
生活習慣

治療と並行して、生活習慣の見直しも重要です。以下のような方法で、症状を緩和することが期待できます。

定期的な運動

軽い有酸素運動は、ストレスの軽減に効果的です。

リラクゼーション法

深呼吸や瞑想などのリラクゼーション技法は、不安や緊張感を軽減します。

規則正しい生活習慣

睡眠不足や不規則な生活は、発作の引き金になることがあるため、規則正しい生活リズムを心がけましょう。

カフェインやアルコールの摂取制限

カフェインやアルコールは神経を刺激し、不安感を悪化させることがあります。


パニック障害の予防と対処法

パニック障害を予防するためには、ストレスをため込まない生活が重要です。適切なリラクゼーションや、周囲とのコミュニケーションを大切にすることで、発症リスクを低減できます。また、発作が起こった際は、以下の対処法を試してみてください。

パニック発作の対処法は?

深呼吸を意識する

過呼吸になりがちなため、息をゆっくり吐くことを意識してリズムを整える。

安全な姿勢をとる

座れる場所があれば座り、頭を少し前に倒すなど楽な姿勢で呼吸を落ち着かせる。

意識を他に向ける

手に触れるものの感触に集中したり、周囲の物を数えて気をそらす。

「発作は必ずおさまる」と念じる

パニック発作では死に至ることはないので、自分を落ち着かせる。

頓服薬の服用

医師の処方がある場合は迷わず頓服薬を使用する。


パニック障害のよくある質問

パニック障害は治りますか?

パニック障害は治療により、症状をコントロールできるようになります。特に、薬物療法と認知行動療法の併用が効果的です。

パニック発作はどれくらい続きますか?

パニック発作自体は通常10~30分程度で収まりますが、症状のピークは数分間続くことが一般的です。

パニック障害は誰にでも起こるのですか?

パニック障害は、遺伝的要因やストレス、神経伝達物質の異常などにより引き起こされるため、誰にでも起こりうる可能性があります。

パニック障害の人に言ってはいけない言葉はありますか?

パニック発作中や強い不安を感じている人に対して、「気のせいだよ」「大げさだ」「もうやめて」「頑張れば何とかなる」といった、本人の苦痛を軽視したり無理解を示すような言葉は避けた方がよいです。こうした発言は相手の不安や孤立感を増幅させ、症状を悪化させる可能性があります。代わりに「大丈夫だよ」「そばにいるよ」「ゆっくり呼吸してみよう」といった、安心感や共感を示す言葉をかけることが望まれます。

パニック障害の人が電車に乗るとどのような症状をきたしますか?

電車内は逃げ場が限られ、混雑や騒音、密閉空間といった要因が不安を増幅させることがあります。パニック障害の人は電車内で動悸や息苦しさ、めまい、発汗、手足の震え、強い不安感、あるいは「ここから出られない」という恐怖感に襲われやすくなります。その結果、外出を控えたり、特定の路線や時間帯を避けるようになることもあります。

パニック障害に似た病気はありますか?

パニック障害と症状が重なる可能性のある疾患としては、全般性不安障害、社交不安障害、特定の恐怖症、心臓病や甲状腺機能亢進症などの身体疾患が挙げられます。また、パニック発作はパニック障害以外の精神疾患(うつ病やPTSDなど)にも付随することがあります。そのため、正確な診断には専門医による評価が必要です。

社交不安障害


パニック障害のポイント

  • パニック発作で死ぬことは決してない
  • 誰しも起こりうる疾患で、パニック発作はもともと人間が持っているアラート機能の誤作動
  • 抗うつ薬を内服した上で、不安の程度が低い状況から段階的に慣らしていく(段階的暴露療法)
  • お守りがわりの抗不安薬を財布に忍ばせる
  • 抗うつ薬が使えない人もいるので、必ず精神科専門医・指定医に相談すること

パニック障害のまとめ

パニック障害は、突然の強い不安や恐怖を引き起こす病気ですが、適切な治療と対処法を知ることでコントロール可能です。もし、繰り返し発作を経験している場合は、早めに専門医に相談し、治療を開始しましょう。生活習慣の改善やリラクゼーション技法を取り入れながら、自分に合った治療法を見つけることが大切です。