過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群(IBS)は、腸の機能的な障害であり、腹痛や不快感、便通の異常(下痢または便秘)を特徴とします。症状は個人差が大きく、ストレスや食事、生活習慣が影響することが多いです。具体的には、腹部のけいれんや膨満感、便意の急激な変化が見られます。過敏性腸症候群の原因は明確ではありませんが、腸内の神経系の異常や腸内細菌のバランスの乱れ、心理的要因(ストレスや不安)が関与しているとされています。診断は主に問診と身体検査を基に行われ、他の疾患を除外するために追加検査を行うこともあります。治療には、食事療法やストレス管理、薬物療法(抗コリン薬や下痢止めなど)を用います。生活習慣の改善も重要で、定期的な運動や十分な水分摂取が推奨されます。
過敏性腸症候群の原因
過敏性腸症候群(IBS)の原因は多岐にわたり、主に以下の要因が考えられています。まず、腸の運動機能の異常が挙げられます。腸の筋肉が過剰に収縮したり、逆に動きが鈍くなることで、腹痛や便通の異常が生じます。次に、ストレスや心理的要因も重要です。ストレスが腸の神経系に影響を与え、症状を悪化させることがあります。さらに、腸内細菌のバランスの乱れや、過去の感染症(特に胃腸炎)による影響も関与しています。これに加えて、食事の内容(特定の食物や添加物)や遺伝的要因も症状を引き起こす要因として考えられています。これらの要因が複合的に作用し、過敏性腸症候群を引き起こすとされています。
過敏性腸症候群の種類
便通異常の傾向によって、大きく3つのタイプに分けられます。
また、下痢と便秘が交互に起こる混合型を含めると4つの分類とされることもあります。
下痢型(IBS-D)
急な腹痛とともに軟便・下痢を起こしやすいタイプ。
特に外出前や会議前など、緊張や不安を感じるシーンで強い便意を覚えることが多く、生活の質(QOL)を大きく下げる要因となります。
便秘型(IBS-C)
腸の蠕動運動が低下していることで便秘が慢性的に続くタイプ。
排便までに長い時間がかかり、お腹の張りやガスが溜まることで腹部膨満感や不快感を感じやすいのが特徴です。
混合型(IBS-M)
下痢と便秘が交互に繰り返すタイプ。
一定期間下痢が続いた後、急に便秘に転じるなど、日によって症状が変化するため、自己管理や治療のアプローチが難しくなる場合があります。
過敏性腸症候群の
セルフチェック(初期症状)
消化器症状
- 腹痛や腹部不快感
- 下痢(急に便意を感じることが多い)
- 便秘(硬い便が出ることが多い)
- 交互に下痢と便秘があらわれる(混合型)
- 腹部の膨満感やガスの増加
- 食後の腹部の不快感
精神的症状
- ストレスや不安感の増加
- イライラ感や落ち着きのなさ
- 抑うつ気分
上記のような症状は個人差が大きく、生活習慣やストレス、食事内容によっても影響を受けます。症状が持続したり、日常生活に支障をきたす場合は、当クリニックへご相談ください。
過敏性腸症候群の検査・診断
過敏性腸症候群(IBS)の検査・診断は、主に問診と身体検査を通じて行います。まず、症状や生活習慣を詳しく聞き取り、腹痛や便通の異常について確認します。診断基準としては、ローマ基準が広く用いられ、特に腹痛が便通の変化と関連しているかどうかが重要なポイントです。また、他の疾患を除外するために、血液検査や便検査、内視鏡検査などを行う場合もあります。これにより、感染症や炎症性腸疾患、大腸癌などの可能性を排除します。さらに、食事日誌をつけることで、特定の食物が症状に与える影響を評価することもあります。最終的には、これらの情報を総合的に判断し、過敏性腸症候群と診断します。なお、内視鏡検査などが必要になった場合には、連携する医療機関をご紹介します。
過敏性腸症候群の治療法
食事療法
食事療法は、IBSの症状を緩和するための基本的なアプローチです。特定の食物が症状を悪化させることがあるため、食事日誌をつけてトリガーとなる食品を特定します。低FODMAPダイエット(発酵性オリゴ糖、二糖類、単糖類およびポリオールを制限する)が効果的とされています。食物繊維の摂取も重要で、便秘型のIBSには水溶性食物繊維が推奨されます。
薬物療法
薬物療法には、抗けいれん薬や下痢止め、便秘薬が含まれます。抗けいれん薬は腹痛を緩和し、下痢型IBSにはロペラミドなどの下痢止めを使用します。便秘型には、オスモティック下剤や食物繊維製剤が効果的です。また、新しい薬剤として、腸内微生物叢を調整する薬も研究されています。
漢方療法
漢方薬もIBSの治療に用いることがあります。例えば、加味逍遥散や半夏厚朴湯などが不安やストレスによる症状に効果があります。
認知行動療法(CBT)
認知行動療法は、IBSに伴うストレスや不安を軽減するための心理的アプローチです。症状に対する認識を変えたり、ストレス管理技術を学ぶことで、症状の改善が期待できます。
過敏性腸症候群のセルフケア
過敏性腸症候群は生活の質に大きく影響しますが、毎日のちょっとした習慣改善で症状が和らぐケースも少なくありません。以下のセルフケアを心がけてみましょう。
食事のとり方を見直す
食事の量や内容に気をつけることが基本です。
- 少量を複数回に分けて食べる(暴飲暴食を避ける)
- 腸に刺激を与えやすい香辛料や脂質の多い食事を控える
- アルコールやカフェインを摂りすぎないよう注意する
- 食物繊維をとりすぎるとガスが溜まる場合もあるので、自分の体質に合った量を探す
ストレス緩和・リラックス法を習慣化
深呼吸やマインドフルネスなど、短時間でできるリラクゼーション法を取り入れ、自律神経のバランスを整えましょう。
寝る前に5分だけ軽いストレッチをする、リラックス音楽を聴くなど、小さな工夫が長期的に見て大きな効果をもたらす可能性があります。
適度な運動を続ける
ウォーキングやヨガ、軽いジョギングなど有酸素運動を週に数回取り入れると、血行が改善され、腸の動きが活発になります。
運動でストレスを発散できるメリットもあり、一石二鳥といえます。
きちんと休む、睡眠を確保する
過度の疲労や睡眠不足は、腸への悪影響を加速させます。
就寝・起床時間を一定に保ち、スマホやパソコンの使用を寝る前は控えるなど、睡眠の質を高める工夫をしましょう。