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就労移行支援

働き方  / 精神科・心療内科

就労移行支援とは

就労移行支援は、障害や難病のある方が一般企業で働くために必要な知識・スキルの習得や就職活動の支援を行う福祉サービスです。対象となるのは18歳以上65歳未満で、身体障害・知的障害・精神障害・発達障害・難治性疾患など何らかの障害や病気があり、一般企業での就労を希望する方です。基本的には障害者手帳を所持している方が対象ですが、手帳がなくても医師の診断書や意見書で障害や病状を証明できれば利用可能です。

利用期間は、原則として利用開始から最長2年間で、その期間内に就職を目指します。ただし、2年経っても就職に至らない場合には市区町村の審査によって認められれば、最大1年間の延長(計3年まで)が可能です。延長には「延長すれば就職の見込みがある」などの合理的な理由が必要になります。一度途中で利用を中断した場合、利用期間がリセットされることはなく、中断前に利用した期間を差し引いた残りの期間のみ利用できる点にも注意が必要です。

利用料金は、就労移行支援のサービス費用の9割が自治体(国)の補助で賄われ、利用者負担は原則1割のみです。さらに利用者負担には月額上限があり、前年度の収入状況に応じて生活保護世帯や市町村民税非課税世帯(年収300万円以下程度)の場合は自己負担上限が0円となります。それ以上の所得でも月9,300円または32,000円が上限と定められており、大半の利用者は実質無料でサービスを利用できます。ただし、通所時の昼食代や交通費などは基本的に自己負担となります。就職後6か月間の定着支援は無料で受けられます。利用中は原則としてアルバイト等の就労は控えるよう求められることが多いため、訓練に専念する形が想定されています。

就労移行支援A型と就労移行支援B型の違い

「就労移行支援A型」と「就労移行支援B型」は、障害を持つ方の就労支援を目的とした制度ですが、対象者や支援内容が異なります。A型は雇用契約を結び、最低賃金以上の給与が支払われるのが特徴で、一般企業への就労を目指しつつ、働きながらスキルを身につける場です。一方、B型は雇用契約を結ばず、工賃として収入を得る形で、就労が難しい方の自立や社会参加を支援します。それぞれの障害や状況に応じたサポートを提供する仕組みです。


就労移行支援のプログラム内容

就労移行支援事業所では、就職に必要な様々なトレーニングや支援プログラムが提供されます。以下に代表的な内容を示します。

職業訓練・スキルトレーニング

パソコンの基礎(タイピングやOfficeソフトの操作など)やビジネスマナー(名刺交換、敬語、身だしなみなど)の職場で必要な一般スキルの訓練が行われます。事業所によっては専門スキルの講座(プログラミング、デザインなど)を用意し、希望職種に応じた技能習得を支援しているところもあります。生活習慣の改善や体力づくり、ストレスコントロールなどの支援も行われます。

就職活動サポート

求人情報の検索や応募書類(履歴書・職務経歴書)の書き方指導、面接対策(模擬面接)などを通じて、実際の就職活動を具体的に支援します。応募先企業への面接同行や障害の伝え方のアドバイスをしてもらえる事業所も多く、ハローワークや障害者職業センターなどとも連携して求人探しをサポートします。応募企業との調整役として日程調整や面接時の配慮事項の共有を担う場合もあります。

コミュニケーション・対人スキル訓練

グループディスカッションやソーシャルスキルトレーニング(SST)などを通じて、報連相(報告・連絡・相談)やチームで協働するスキルを身につけます。対人関係が苦手な方には少人数や個別での練習機会が設けられるなど、障害特性に応じた配慮が行われます。

個別相談・メンタルサポート

定期的に面談の時間を設け、利用者それぞれの悩みや体調管理の相談に応じます。精神保健福祉士など専門スタッフからの助言が得られる場合もあります。利用者ごとに個別支援計画を策定し、3ヶ月ごとなど定期的に達成状況をモニタリングしながら目標や支援内容を見直していきます。

職場体験・企業実習

事業所と連携している企業で短期間(1~2週間、場合によっては1ヶ月前後)の実習を行います。実際の企業の職場で業務を体験することで、働く感覚や自分に合った業務内容かどうかを確認できます。また、職場でのマナーを実地で学べるため、自信を高める機会にもなります。企業側にとっても、採用前に利用者の適性やサポート必要度を把握できるメリットがあります。

就職後の定着支援

就労移行支援の利用期間中に就職が決まった後も、一定期間支援が続きます。就職直後は新しい業務や人間関係でストレスが溜まりやすいため、事業所スタッフが定期的に面談や電話で相談を受け、必要に応じて勤務先を訪問して上司や同僚に環境調整を依頼します。これにより職場定着をサポートし、離職を防ぎます。定着支援は一般に就職後6ヶ月間を目安として実施され、その間の利用料は無料です。2018年4月からは「就労定着支援」という制度も加わり、就労移行支援を経て一般就労した障害者が最長3年間にわたり生活面や職場での課題解決を支援してもらえるようになりました。


企業側の受け入れ支援

事業所と企業の連携・サポート

一般企業は就労移行支援事業所を活用することで、障害のある人材の採用や定着に必要な支援を受けられます。事業所は訓練を経た人材を紹介してくれるだけでなく、採用前の面接調整、応募者の障害特性や適性の情報提供、採用後の定着支援などを総合的にサポートします。就職後も事業所のスタッフが定期的に企業と連携し、本人からの相談に応じたり職場環境の調整を行ったりするため、企業と障害者の間を仲介して問題解決を図りやすくなります。

企業側が配慮すべき点

企業には「合理的配慮」の提供が義務付けられています。これは障害のある従業員が他の従業員と同等に働けるよう、過度の負担にならない範囲で環境調整や業務上の措置を行うことを指します。たとえば勤務時間や休暇の調整、業務内容や職場レイアウトの工夫、専用機器の導入などが含まれます。また社内で相談役やメンターを配置すると、本人が相談しやすくなり、周囲の理解も得やすくなるでしょう。採用前に企業実習を実施して、実際の職務適性やサポート内容を確認するのも有効です。


助成金や制度

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

障害者を初めて雇い入れた企業に支給される助成金です。身体・知的障害者(重度でない場合)をフルタイム雇用する場合などに支給額が設定されています。重度障害者や精神障害者の場合などには支給額がより手厚くなります。

発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金

発達障害や難病のある方を雇用した企業が対象です。企業規模や雇用形態によって支給額が異なり、中小企業のほうが手厚く支給される仕組みになっています。

障害者トライアル雇用助成金

原則3か月間、試行的に障害者をお試し雇用した場合に支給される助成金です。トライアル期間中に適性を見極めて本採用することで、雇用のミスマッチを減らすことができます。

障害者職場定着支援奨励金

障害者を雇った企業が、社内または外部委嘱の職場支援員を配置して継続的に支援する場合に支給される奨励金です。支給額や期間は雇用する障害者の人数や障害種別などによって異なります。

障害者作業施設設置等助成金

作業施設や設備の整備・改造が必要な場合に、費用の一部が支給される助成金です。車椅子対応のバリアフリー化や専用機器の導入などが該当します。

障害者介助等助成金

重度視覚障害者や肢体不自由者などを雇用する際に、業務上の介助を行う職場介助者や手話通訳・要約筆記担当者を委嘱する場合に支給される助成金です。

ほかにも障害者雇用納付金制度や障害者就業・生活支援センターの無料相談支援、地域障害者職業センターによるジョブコーチ派遣など、様々な支援策が設けられています。企業側はこれらを活用し、就労移行支援事業所と連携しながら、障害のある方が働きやすい環境を整えることが大切です。


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