就労移行支援とリワークの違い
対象者の違い
就労移行支援の対象者
65歳未満で何らかの障害(精神障害・発達障害・知的障害・身体障害・難治疾患など)を持ち、一般企業で働きたいと希望する人が対象です。通常は現在仕事に就いていない求職者が利用します(在職中でも休職者は一定条件で利用可能ですが、基本的には就職活動中の方が中心) 。障害者手帳を持っていない場合でも、医師の診断書や通院実績があれば自治体判断で利用が認められるケースがあります。
リワークの対象者
リワーク(職場復帰支援)は、主にうつ病などの精神疾患により休職中の労働者が対象です。気分障害(うつ病)や統合失調症などで一時的に働けなくなった人が、職場復帰に向けてリハビリを行うためのプログラムであり、現在休職中の社員や、過去に休職経験があって復職を目指す人が利用します。基本的に精神疾患に特化した支援であり、身体障害などの場合は該当しません(身体リハビリ等別の支援となります)。なお発達障害が原因でメンタル不調となったケースなどではリワークを利用する場合もありますが、一般的には「精神障害による休職者」がリワークの想定対象です。
プログラム内容の違い
就労移行支援のプログラム内容
一般就労に必要なスキル習得や就活支援を行います。例えば、職業訓練(パソコンスキル研修、ビジネスマナー講習など)や、就職活動のサポート(求人検索の補助、履歴書・職務経歴書の作成指導、模擬面接の実施、面接への同行支援等)があります。加えて、コミュニケーション能力の向上訓練としてグループディスカッションやソーシャルスキルトレーニング(SST)などを行い、対人スキルを伸ばします。利用者個人ごとの面談で就労に関する悩み相談や生活リズムの調整支援を行うほか、希望や適性に応じて企業見学・実習の機会を設ける事業所もあります。また就職後には就労定着支援(職場定着支援)として定期的に面談や職場訪問を行い、長く働けるようフォローアップも提供されます。
リワークのプログラム内容
リワークプログラムでは職場復帰に向けたリハビリテーションを段階的に実施します。まず休職中の生活リズムを整え、決められた時間に施設へ通所することで通勤や勤務時間帯に体を慣らす訓練をします。プログラム中には、実際の職場に近い環境での作業練習(オフィスワークや軽作業など)を行い、集中力・作業耐性の回復を図ります。併せて、心理教育や心理療法も重要な要素で、うつ病などの再発防止のための疾病に関する教育や認知行動療法(CBT)、ストレスマネジメント研修などが提供されます。グループワークとしてはソーシャルスキルトレーニング(SST)やグループミーティング、集団認知行動療法等を実施し、他者との交流や対人スキルを回復・向上させます。また、軽い運動やレクリエーションを取り入れて体力づくりや生活リズム改善も図ります。プログラム後半では休職に至った要因の振り返りや復職後の働き方の見直しを行い、同じ理由で再び休職しないよう対策を立てる訓練も行われます。こうしたメンタルヘルス面のケアと職場適応訓練を組み合わせ、復職に必要な準備を総合的に進めていきます。
支援の目的の違い
就労移行支援の目的
一般就労への新規就職を実現することが最大の目的です。訓練を通じて職業スキルや就労準備性を高め、利用期間内に企業等へ採用されることを目指します。言い換えれば、就労移行支援は「これから就職しようとする人」のための支援であり、最終ゴールは本人に合った職場への就職決定です。そのためプログラムも就職活動に直結する内容が中心です。
リワークの目的
職場復帰(復職)をスムーズに行い、その後も安定して働き続けることが目的です。単に復職するだけでなく、再度休職しないようにする(再発防止)ところまでを含めて支援目標としています。リワークは「一度就職した人(現在休職中)が元の職場または社会に戻る」ための支援であり、プログラム修了後に職場へ復帰し、継続就労できる状態になることがゴールです。したがって、メンタル面の安定と勤務能力の回復に重点が置かれます。
どちらの支援を選ぶべきか
現在休職中で復職先(今の職場)がある人は、主治医や企業とも連携しながら復職準備を進めるリワーク支援の利用が適しています。一方、離職中・就労経験なしで新たに就職先を探している人や、障害があって一般就労への不安がある求職者は就労移行支援を利用するのが基本です。特に発達障害や精神障害で退職した方が再就職を目指す場合は、就労移行支援事業所で職業訓練を受けつつ求人開拓をしてもらうほうが適しています。逆に休職者が就労移行支援を利用するケースも法律上は可能ですが、在職者の場合は自治体の判断で利用が認められない傾向もあるため、まずは企業内制度や職業センターなどのリワーク支援を検討するのが一般的です。
費用や制度の違い
就労移行支援の利用料金と制度
就労移行支援は障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスで、公的に給付(自治体からの支給決定)を受けて利用します。事業所を利用する際の費用は原則として9割が公費負担で、利用者負担は1割のみです。さらに所得に応じた月額負担上限額が定められており、低所得世帯(市町村民税非課税世帯等)や生活保護受給中の方は自己負担0円で利用できます。多くの利用者は収入要件を満たすため実質無料で通所しており、仮に自己負担が発生する場合でも月額9,300円(一定所得以下)または37,200円(高所得層)を上限に、それ以上の負担は生じません。利用手続きとしては、市区町村の障害福祉窓口で事前申請を行い「障害福祉サービス受給者証」の交付を受ける必要があります。医師の意見書や障害者手帳(任意)を提出して支給決定を受けた後、自分に合った就労移行支援事業所と契約を結びます。利用期間は原則として最長24か月(2年間)で、市町村審査会による承認のもと、一度だけ最大1年延長(計3年まで)も可能です。2年以内に就職できなかった場合は延長利用か他の支援策を検討する形になります。
リワークの利用料金と制度
リワーク支援は提供主体によって費用負担制度が異なり、医療機関型、公的機関型(地域障害者職業センター等)、福祉サービス型(就労移行支援事業所等)、企業内プログラム型に大別されます。医療機関のリワークは精神科デイケアや作業療法など保険診療扱いとなるため、健康保険の自己負担(通常3割、精神通院医療の公費制度利用時は1割)を支払います。利用者負担は1日あたり約2,000~3,000円(3割負担の場合)が目安ですが、公費負担医療を併用すれば1日数百~1,000円程度で利用できる場合もあります。
地域障害者職業センターのリワーク支援(職場復帰支援事業)は公的サービスとして利用料無料で提供されます(交通費や食事代等は自己負担)。この職業センターのリワークでは企業や主治医と連携しながら職業リハビリテーションを進め、期間はおおむね3~4か月となることが多いです。一方、福祉サービスとしてのリワーク型プログラム(就労移行支援事業所など)を利用する場合、費用負担は就労移行支援と同様で所得に応じた1割負担(低所得者は無料)となります。内容はビジネスマナーやPCスキル研修などを通じて復職準備をする形で、3~6か月ほど通所するケースが多いです。
最後に企業内リワーク(職場復帰支援制度)の場合、産業医や人事担当者による社内プログラムに従って段階復職を進めるため、基本的に本人の利用料はかかりません。企業内制度の具体的な内容は就業規則や厚生労働省のガイドラインなどに基づいており、主治医の復職許可を得た後、人事部と相談して短時間勤務から通常勤務へ移行する等のプランを作成します。企業内リワークの期間は個人の回復状況や会社の方針によってさまざまで、数週間から数か月かけて段階的に復帰する方法が一般的です。
就労移行支援とリワークの比較表
項目 |
就労移行支援 |
リワーク(復職支援) |
対象者 |
18~64歳の障害者(精神・発達・知的・身体・難病など)。現在無職で一般就労を希望する人。 |
精神疾患で休職中の労働者(主にうつ病・統合失調症など)。 |
支援の目的 |
一般企業への新規就職(障害者枠含む)の実現 |
職場復帰(復職)と復職後の安定就労(再休職防止) |
プログラム内容 |
- 職業訓練(PCスキル、ビジネスマナー等) |
- 復職リハビリ(決まった時間に通所し通勤や作業の練習) |
利用期間 |
原則最長2年間(24か月)。 |
数か月程度(医療機関なら約3~6か月、職業センターなら約3~4か月、企業内はケースによる) |
利用料金(自己負担) |
- 原則1割負担(公費90%補助)。 |
- 医療機関: 保険診療で自己負担1~3割(目安: 数百~数千円/日) |
制度・実施機関 |
- 障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス。 |
- 医療機関(精神科病院・クリニック) |