精神疾患の治療ゴールは?
- 医療機関からのご挨拶
- リカバリーとは?症状の有無だけではない「回復」
- なぜリカバリーが重要なのか
- リカバリーに向けたキーポイント
- 家族や周囲の果たす役割
- 医療・福祉専門家のサポートとセルフケア
- まとめ
医療機関からのご挨拶
うつ病や統合失調症、双極性障害など、さまざまな精神疾患を抱える方にとって、治療のゴールはどのように考えられるべきでしょうか?
一般的には、「症状がなくなること=治ること」と捉えられがちですが、精神医療の現場では「リカバリー」という概念が重視されています。
「リカバリー」とは、症状の有無だけでなく、「自分らしく、満足感を持って生活できる」状態に焦点を当てた考え方です。
本コラムでは、リカバリーとは何か、それがなぜ大切なのか、そして患者さんとご家族がどのようにこの考え方を取り入れると良いのかを詳しく紹介します。
リカバリーとは?症状の有無だけではない「回復」
リカバリー(Recovery)は、精神疾患の「完全な治癒」や「症状の消失」ではなく、本人が望む生活を営める状態を目指す考え方です。
具体的には、自分のペースで仕事や学校、家事、趣味などに参加し、自尊心を保ちながら社会とつながることを重視します。
症状がゼロにならなくても、コントロールできる範囲に維持しつつ、「自分らしい人生を送れる」状態を回復と捉えるのです。
なぜリカバリーが重要なのか
「リカバリー」視点は、以下のような点で患者さんや家族、社会に大きな意味を持ちます。
生活の質(QOL)が向上する
症状の完全消失を目指すよりも、日常生活での活動や喜び、社会参加が重視されるため、人生の満足度が高まりやすい。
自己肯定感の維持
「自分が病気だから何もできない」という思い込みではなく、できることや得意なことを活かす姿勢を育てる。
再発や悪化を予防しやすい
病気との付き合い方を学び、再発時も対処やサポートがスムーズに行える。
リカバリーに向けたキーポイント
リカバリーを実現するためには、本人の主体性と周囲の理解が大切です。以下のキーポイントを押さえるとよいでしょう。
目標や希望を設定
小さなことでもいいので、「こうなりたい」という具体的な目標を持つ。
例:週に1回は外出したい、趣味を再開したいなど
自己モニタリング
体調や気分を記録し、症状の変化やきっかけを客観的に把握。
必要なら主治医やカウンセラーと共有する。
周囲からのサポートを受け入れる
家族や友人、ソーシャルワーカー、ジョブコーチなどの力を借りながら、孤立を防ぐ。
回復を段階的に評価する
完全によくなるかどうかではなく、「少しできることが増えた」「疲れを感じたら休めるようになった」など、小さな進歩を重視。
自己肯定感を育む
「できない面」よりも、「できる面」や「成長できた点」に目を向ける。
カウンセリングやグループ活動で肯定的なフィードバックを得ると◎。
家族や周囲の果たす役割
リカバリーを支えるには、周囲の理解や配慮が大きな力となります。家族や友人、職場は以下の点に留意するとよいでしょう。
無理な励ましやプレッシャーを避ける
「頑張って」「早く治して」と言うよりも、「困ったら言ってね」「少しずつやってみよう」という共感的姿勢を示す。
適度な距離感を保つ
過干渉は逆効果。本人のペースを尊重しながら、必要なときに寄り添う。
環境調整をサポート
家事や生活上の手続きなど、本人がストレスを感じる部分を一緒に検討・整備。
過度な負担を軽減して回復を助ける。
一緒に小さな成功を喜ぶ
「今日は散歩できたんだね、すごい」「少し疲れが減ったみたいだね」など、進歩を肯定する声かけを大切に。
医療・福祉専門家のサポートとセルフケア
リカバリーに向けたプロセスでは、医療や福祉の専門家との連携が効果的です。
- 主治医やカウンセラーとの定期面談: 症状の変化や生活の困りごとを共有し、アドバイスや調整を行う
- デイケアやグループプログラム: ソーシャルスキルトレーニング(SST)や認知行動療法のグループで、具体的な対処法を学ぶ
- セルフケアとしてのリラクゼーションや運動: ウォーキングやヨガ、マインドフルネスなどを日常に取り入れ、ストレス軽減を図る
- 就労や社会参加に関する支援: 就労移行支援や障害者枠の活用を検討し、無理のない職場復帰を目指す
まとめ
精神疾患の治療ゴールとして、「リカバリー」という考え方は、単に症状をゼロにするのではなく、本人が希望する生活を営むことを目指します。
そのためには、本人の主体性と周囲の温かい理解が欠かせません。
まずは、小さな目標やできることを見つけ、セルフケアや専門家のサポートを活用しながら進むことで、再発予防や生活の質(QOL)の向上につながります。
当院でも、リカバリーを支える治療やカウンセリングを行っておりますので、一人で抱え込まず、いつでもご相談ください。