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相手が転移を起こさないような振る舞いについて

対人関係  / 感情  / 転移

はじめに

はじめに転移」とは、心理学や精神分析の領域で、過去の体験や重要な対人関係で形成された感情を、現在の別の相手に無意識に投影してしまう現象を指します。
この転移が強く働くと、相手はあなたに対して「実際とは異なるイメージ」や「不安・嫌悪感」を抱きやすくなり、人間関係がスムーズにいかなくなることがあります。
本コラムでは、心療内科としての視点から、相手が転移を起こさないようにするために意識したいポイントや、もし転移が強く現れた場合に穏やかに対応するためのヒントを紹介します。
「なぜあの人は私だけにきつく当たるのか」「どのように接すれば理不尽な衝突を避けられるのか」とお悩みの方は、ぜひご覧ください。


転移とは

転移とは、過去の親子関係、兄弟関係、元パートナーとの体験など、無意識下に残っている感情を、現在関わっている別の相手(同僚や家族、治療者など)に対して投影してしまう現象です。

例えば、

  • 昔の厳しい親を思わせる上司に、理由なく反発や恐怖を抱く
  • 過去の裏切りから生じた不安を、新しいパートナーに対して抱いてしまう

このように、実際の相手とは違うイメージや感情を持つことで、コミュニケーションの衝突や不信を増大させることがあるのです。


なぜ「相手が転移を起こさない」ことが大切なのか

もし相手があなたに対して転移を起こすと、誤解不信、あるいは理不尽な怒りが向けられやすくなります。
例えば、「この人は自分を否定する親と同じ」という無意識の思い込みが強まれば、あなたがほんの些細なアドバイスをしただけでも「否定された」と受け取ってしまうかもしれません。

これにより、

  • コミュニケーションのしこりが長引き、わだかまりとなる
  • 対人関係の不要な衝突や不安が増大し、仕事や家庭生活にも影響

転移をできるだけ刺激しない振る舞いを心がけることは、人間関係のストレスを軽減する上で非常に有効です。


相手の転移を刺激しないための具体的な振る舞い

以下のような振る舞いや態度を心がけると、相手があなたに無意識の嫌悪や不安を転移しにくくなります。

態度を安定させる

防衛(無意識のうちに自分を守る心の仕組み)が相手の中で過度に働かないよう、態度や口調をなるべく一定に保ちましょう。 いきなり厳しくしたり、突然優しくしたりといった“アップダウン”を避けるようにします。

境界線(バウンダリー)を意識する

バウンダリー(自他の境界線をはっきりさせる考え方。相手との距離感を適度に保つことで、自分を守ると同時に相手に過剰に踏み込まれないようにする) といった相手との距離感を適切に保ち、踏み込みすぎないようにしましょう。
また、相手のプライバシーにも配慮し、むやみに個人的な事情を尋ねないように気を付けます。

相手の感情を否定しない

「それはおかしい」「考えすぎ」と切り捨てると、防衛や投影が加速します。
「そう感じるのもわかるよ」と受け止める姿勢を示しつつ、具体的な事実と感情を区別して会話を進めるようにしましょう。

時間を置くことを認める

相手が感情的になりそうなときは、一旦話題を切り上げ、クールダウンの機会を作りましょう。
「少し休憩してから続きを話そう」など、衝突回避の工夫をします。

複数の視点を提案する

「こういう見方もあるよ」と第三者的観点をさりげなく提示するようにしましょう。
ただし、押し付けがましくならないよう注意が必要です。


もし転移が起こったら

どれだけ注意していても、相手が転移を起こす場合はあります。

その際に、

  • 過剰に弁解や反論をしない
    相手の感情が強いときに言い争いをしても逆効果。まずは冷静になるまで待ちましょう。
  • 適度な距離を保つ
    感情が荒れているときは“そっと離れる”のも有効です。
  • 自分の感情も振り返る
    投影(自分の感情を相手に映し出すこと)がこちら側にも起きていないか、自己チェックしましょう。
  • 必要に応じて第三者を介入させる
    職場なら上司や産業医、家族間なら別の親族やカウンセラーに相談しましょう。

困ったら専門家や家族のサポートを

相手の転移が激しく、対話が成り立たない、職場や家庭でのトラブルが深刻化している場合は、専門家に相談しましょう。

  • 心療内科・精神科
    転移の背景や対人関係の問題に対するアドバイスやカウンセリングを行う
  • カウンセリング・心理療法
    家族療法やグループ療法で、当事者同士の誤解を解く場を設ける
  • 職場の場合
    産業医や人事担当への相談、EAP(従業員支援プログラム)の活用

まとめ

相手が無意識の感情を投影し、転移を起こしてしまうと、理不尽に感じられる場面もあります。
しかし、「なぜこんなに反応が過剰なのか」「過去の誰かを投影しているのかも」という視点を持ち、相手の感情を否定せず、無理のない範囲で境界線を保つ態度を取ることで、対立やストレスを最小限に抑えられます。
同時に、自分自身も投影(自分の中にある感情や特徴を、相手が持っているように思い込む防衛機制のひとつ)や防衛(自分の不安や葛藤から身を守るために無意識に働く心の仕組み(例:否認、投影、合理化など))に気をつけ、客観的な視点を失わないことが重要です。
当院では、対人関係や転移の問題に対するカウンセリング・心理療法も行っておりますので、ご自身や周囲との関係にお困りの際は、お気軽にご相談ください。
相手を尊重しながら、無理なくコミュニケーションを続ける」――そのためのヒントとして、本コラムがお役に立てば幸いです。


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