過眠症について:鑑別疾患と治療について医師からのご案内

日中の強い眠気や過度の睡眠時間にお悩みではありませんか?それは「過眠症」という睡眠障害の可能性があります。当クリニックでは、過眠症の診断と治療を行っておりますが、必要に応じて専門的な検査や治療を提供する医療機関へのご紹介も行っています。今回は、過眠症について、鑑別疾患も含めて詳しくご説明いたします。

過眠症とは

過眠症は、十分な夜間睡眠をとっているにもかかわらず、日中に強い眠気や居眠りを繰り返す睡眠障害です。過眠症には主に以下の種類があります:
• 特発性過眠症:原因が明確でないもの
• ナルコレプシー:情動脱力発作(カタプレキシー)を伴うもの
• 反復性過眠症:周期的に過眠状態が繰り返されるもの

-主な症状
• 日中の過度な眠気:会議中や運転中でも眠気が襲ってくる
• 長時間の睡眠:夜間の睡眠時間が10時間以上になる
• 目覚めの困難:朝起きるのが非常に難しい
• 睡眠酩酊:目覚めた後もしばらく意識がはっきりしない
• 自動症:無意識に行動し、その間の記憶がない

鑑別疾患

過眠症の診断を確定するためには、他の疾患との鑑別が重要です。以下の疾患が類似した症状を引き起こす可能性があります。

-ADHD(注意欠如・多動症)/ ASD(自閉スペクトラム症)による過眠
ADHDによる過眠
• 集中力の欠如:注意力の問題から疲労感が増し、過度な眠気を感じることがあります。
• 睡眠リズムの乱れ:夜更かしや不規則な睡眠習慣が眠気を誘発します。

ASDによる過眠
• 感覚過敏:環境刺激に敏感で、睡眠の質が低下し、日中の眠気につながることがあります。
• 生活リズムの固定化:特定のパターンに固執することで、睡眠時間が過度に長くなる場合があります。

-ナルコレプシー
• 情動脱力発作(カタプレキシー):笑いや驚きで突然筋力が抜ける
• 入眠時幻覚:眠りに入る際の幻覚
• 睡眠麻痺(金縛り):目覚めたときに体が動かせない

-睡眠時無呼吸症候群
• いびきや無呼吸エピソード:睡眠中に呼吸が一時的に止まる
• 起床時の頭痛:酸素不足によるもの
• 日中の眠気:夜間の睡眠が中断されるため

-うつ病
• 気分の落ち込み:持続的な憂うつ感
• 興味・喜びの喪失:以前楽しんでいた活動への興味がなくなる
• 睡眠過多または不眠

-薬物やアルコールの影響
• 薬物副作用:一部の薬剤は眠気を誘発
• アルコール依存:睡眠の質が低下し、日中の眠気が増す

診断方法

-問診と睡眠日誌
症状の詳細、生活習慣、家族歴などを確認します。睡眠日誌をつけていただくことで、睡眠パターンを客観的に評価します。

-多数睡眠潜時検査(MSLT)
日中の眠気の程度を評価するために行います。一定間隔で短時間の睡眠をとり、その入眠までの時間を測定します。
当クリニックではPSG検査は実施しておりません。必要な場合は、近隣の杏林大学病院や国立精神・神経医療研究センター病院(NCNP病院)をご紹介いたします。

-ポリソムノグラフィー(PSG)
睡眠時無呼吸症候群など他の睡眠障害を除外するために行う精密検査です。
当クリニックではPSG検査は実施しておりません。必要な場合は、近隣の杏林大学病院や国立精神・神経医療研究センター病院(NCNP病院)をご紹介いたします。

治療法

-薬物療法
• 覚醒促進薬:モダフィニルやメチルフェニデートなどを使用し、日中の眠気を軽減します。
• 抗うつ薬:症状や合併症に応じて使用することがあります。

-生活習慣の改善
• 規則正しい睡眠スケジュール:毎日同じ時間に寝起きする
• 適度な運動:体内時計を整える効果があります
• 睡眠環境の整備:静かで快適な寝室を保つ

-心理的サポート
• 認知行動療法(CBT):睡眠に対する不安やストレスを軽減
• ストレス管理:リラクゼーション法やマインドフルネス

最新の研究動向

-神経伝達物質の研究
2023年の日本睡眠学会で発表された研究によると、過眠症患者ではヒスタミンやオレキシンといった神経伝達物質の異常が示唆されています。これにより、新たな治療薬の開発が期待されています。

-遺伝的要因の解明
家族内発症のケースが報告されており、遺伝的要因の研究が進んでいます。将来的には、遺伝子検査によるリスク評価が可能になるかもしれません。

まとめ

過眠症は、適切な診断と治療により症状の改善が期待できます。日中の強い眠気や過度の睡眠時間でお困りの方は、早めに専門医にご相談ください。当クリニックでは、必要に応じて信頼できる専門医療機関をご紹介いたします。

参考リンク
• 日本睡眠学会:睡眠医学の最新情報を提供。
• 厚生労働省 こころとからだの健康:健康情報が掲載。

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