近年、メンタルヘルスへの関心が高まる中、うつ病や双極性うつ病といった精神疾患について理解を深めることが重要となっています。これらの疾患は一見似ているように思われますが、症状や治療法において明確な違いがあります。ここでは、医師の立場からその違いを詳しく解説します。
うつ病は、持続的な抑うつ気分や興味・喜びの喪失を特徴とする精神疾患です。主な症状としては以下が挙げられます:
• 抑うつ気分:ほとんど一日中、毎日感じる
• 興味や喜びの喪失:以前は楽しめていた活動への関心が薄れる
• 体重や食欲の変化:意図しない体重減少や増加
• 睡眠障害:不眠または過眠
• 疲労感やエネルギーの減少
• 無価値感や過度の罪悪感
• 思考力や集中力の低下
• 死についての反復的な思考
双極性うつ病は、躁(そう)状態とうつ状態の両方を経験する疾患です。躁状態では以下のような症状が現れます:
• 異常に高揚した気分:過度の幸福感やイライラ感
• 過剰なエネルギーと活動性
• 睡眠欲求の減少:ほとんど寝なくても平気と感じる
• 考えが次々と浮かぶ(観念奔逸)
• 過度の自信や誇大妄想
• 衝動的な行動:浪費、無謀な運転、性的逸脱など
症状のパターン
• うつ病:抑うつ状態が持続的に続く
• 双極性うつ病:抑うつ状態と躁状態を周期的に繰り返す
治療法の違い
• うつ病:抗うつ薬や心理療法(認知行動療法など)が主な治療法
• 双極性うつ病:気分安定薬(リチウムなど)や抗精神病薬を使用し、抗うつ薬の使用は慎重に行う
診断の難しさ
双極性うつ病は、初めてのエピソードがうつ状態であることが多く、うつ病と誤診されることがあります。そのため、詳細な病歴聴取が重要です。
正確な診断は、適切な治療を行うための第一歩です。ただ、双極性うつ病(双極症)が、発症してからしばらく躁状態がない形で現れることもしばしばあるので、正確な診断がかなり難しいです。双極性うつ病は発症してから診断に平均して5年程度かかると言われています。
うつ病と双極性うつ病は似て非なる疾患です。それぞれの特徴を理解し、適切な診断と治療を受けることが重要です。心の不調を感じた場合は、早めに専門医に相談しましょう。