非定型うつ病・新型うつ病とは
非定型うつ病は、従来のうつ病とは異なる症状を示す気分障害です。主な特徴として、気分反応性(良いことがあれば気分が良くなる)、拒絶過敏性、過眠、過食、鉛様麻痺(手足が重く感じる)があります。これらの症状のうち、気分反応性を含む3つ以上が2週間以上続く場合に診断されます。
一方、「新型うつ病」はマスコミ用語で、医学的に厳密な定義はありません。ストレス耐性の低下や自己否定感の強さが特徴とされ、従来のうつ病と比べて、心理療法やカウンセリング、就労支援などの社会資源の活用が重要視されます。
従来のうつ病とは異なる症状や対応が必要となります。
非定型うつ病・新型うつ病の
原因
非定型うつ病の原因
非定型うつ病の原因は完全には解明されていませんが、性格的要因が大きく関与していると考えられています。不安を感じやすい、他者への気遣いが過剰、評価を気にしすぎるなどの傾向がある人が発症しやすいとされています。また、遺伝的要因の可能性も指摘されており、ある調査では罹患者の7割に親のうつ病歴があったとの報告があります。さらに、養育環境や生活環境などの背景も影響を与える可能性があります。これらの要因が複合的に作用し、思春期に問題を抱え、20代になって症状があらわれるパターンが多いとされています。
新型うつ病の原因
新型うつ病の原因には、困難から逃避したい心理や自己防衛的な心理が挙げられます。仕事のストレス、特に長時間労働や職場での人間関係のトラブルが大きな要因となります。また、自己中心的な性格や、自分の思い通りにならないとストレスを感じやすい傾向も関係しています。生育環境も影響し、過保護や過度に厳しい環境で育った場合、適応力が低下し発症リスクが高まります。ただし、新型うつ病は医学的に厳密な定義がなく、従来のうつ病や双極性障害II型などと重複する部分もあるため、専門医による適切な診断が重要です。
非定型うつ病・新型うつ病の
セルフチェック(初期症状)
非定型うつ病の症状
- 気分反応性(良いことがあれば気分が良くなる)
- 社会生活に支障をきたす拒絶過敏性
- 過眠(どんなに寝ても寝足りない)
- 過食(食欲旺盛になり体重が増加)
- 鉛管様麻痺(体が鉛のように重たい)
- 夕方〜夜にかけて気分が沈む
- 他人の顔色が気になる
- 不安発作
- 怒り発作
- 疼痛性障害の合併
- 抑うつ気分
- 疲労感
- 気分の波がある
- 不安を感じやすい
新型うつ病の症状
非定型うつ病・新型うつ病の
検査・診断
非定型うつ病の診断は、DSM-5の基準に基づいて行われます。まず、うつ病の診断基準を満たし、その上で非定型の特徴を示す必要があります。主な特徴は、気分反応性があり、過食、過眠、鉛様麻痺、拒絶過敏性のうち2つ以上を伴うことです。
一方、新型うつ病は医学的に厳密な定義がなく、マスコミ用語です。従来のうつ病とは異なる症状パターンを示す場合に使われることがありますが、専門的な診断基準はありません。
いずれの場合も、医師による問診と他の精神疾患との鑑別が重要です。まずは気になる症状がありましたら、当クリニックまでご相談ください。
非定型うつ病・新型うつ病の
治療法
薬物療法
抗うつ薬(SSRI、SNRI、NaSSA)が中心となります。非定型うつ病では、ジェイゾロフトやレクサプロなどの安全性が高いSSRIなどを長期使用していきます。気分の波が大きい場合は気分安定薬、極度の倦怠感や過眠には抗精神病薬も使用します。ただし、薬物療法は治療のサポート役であり、これだけで改善することは少ないとされています。当クリニックには、経験豊富な臨床心理士/公認心理師が多数在籍していますので、必要に応じて、認知行動療法などの心理療法もご提案していきます。
精神療法
認知行動療法、対人関係療法、社会リズム療法なども効果的です。特に拒絶過敏性の改善に焦点を当て、対人不安や思考パターンの修正を目指します。医師の診察と臨床心理士/公認心理師によるカウンセリングを並行して行うATスプリットという方法も理想的です。時間をかけて少しずつ改善を図っていく長期的なアプローチが必要です。
生活習慣の改善
日常生活のリズムを整えることが重要です。小さな目標を立てて達成感を得ることや、可能な限り仕事を続けることが推奨されます。仕事をしていない場合は、デイケアや作業所の活用、家事や図書館での活動など、社会との接点を持つことが治療の一環となります。これらの活動を通じて、ストレス耐性の向上や自信の回復を図ります。