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抗精神病薬

抗精神病薬とは

抗精神病薬は、統合失調症の治療に主に用いられる薬です。脳内のドパミンの働きを調節し、幻覚や妄想などの精神病症状を軽減または消失させる効果があります。
抗精神病薬は定型と非定型に分類され、非定型抗精神病薬は全体的に副作用が少ないとされています。主な副作用には、眠気、筋肉のこわばり、振戦、体重増加などがあります。
また、重大な副作用として錐体外路症状、高プロラクチン血症、悪性症候群などがあります。非定型抗精神病薬では、代謝への悪影響に注意が必要です。
抗精神病薬は、統合失調症以外にも躁うつ病や認知症、薬物使用による精神病症状の治療にも使用されることがあります。
当クリニックでは処方していませんが、持効性注射製剤という、筋肉注射すれば1か月間効果が持続する剤形もあります。


抗精神病薬の種類

抗精神病薬は、副作用が少ない非定型抗精神病薬が第一選択として使用されることが多くなっています。しかし、複数の非定型抗精神病薬を使用しても効果が不十分な場合や、副作用のために継続が困難な場合には、定型抗精神病薬が使用されることもあります。
それぞれの抗精神病薬には、即効性を期待した注射剤と持続的な効果を期待した注射剤があり、患者さんの状態や治療環境に応じて選択されます。

定型抗精神病薬

主にドパミンD2受容体を遮断する作用を持ち、陽性症状(幻覚・妄想など)に対して効果的です。ブチロフェノン系、フェノチアジン系、ベンズアミド系の3つに分類されます。定型抗精神病薬は強力な陽性症状の改善効果がある一方で、錐体外路症状や高プロラクチン血症などの副作用が比較的多く見られます。

非定型抗精神病薬

ドパミンD2受容体だけでなく、セロトニン2A受容体も同時にブロックする作用を持ちます。陽性症状だけでなく陰性症状(意欲低下など)にも効果があります。非定型抗精神病薬は、定型抗精神病薬と比較して錐体外路症状や高プロラクチン血症などの副作用が少ない傾向にあります。また、一部の非定型抗精神病薬(アリピプラゾールやブレクスピプラゾール)は、ドパミン受容体に結合後に弱いシグナルを送る特性を持っています。


定型抗精神病薬

フェノチアジン系

コントミン、ウインタミン(クロルプロマジン)

主成分がクロルプロマジンの抗精神病薬です。コントミンは1952年に開発され、統合失調症や躁うつ病、不安症状などの治療に使用されます。通常、成人には1日30~100mgが分割経口投与され、精神科領域では50~450mgまで増量可能です。副作用としては、強い鎮静作用による眠気や口渇、便秘、錐体外路症状が挙げられます。ウインタミンは細粒剤で、主にクロルプロマジンの効果を持ちつつ、特に子どもや高齢者に適した用法で使用されます。陽性症状に対して強い効果を示しますが、陰性症状には効果が薄いことがあります。

レボトミン、ヒルナミン(レボメプロマジン)

フェノチアジン系の抗精神病薬で、主に不安や興奮状態を抑えるために使用されます。レボメプロマジンは特に睡眠作用が強く、不眠症の治療にも用いられます。通常の投与量は成人で1日5mgから50mgであり、患者さんの状態に応じて調整します。陽性症状だけでなく陰性症状にも効果があり、統合失調症や躁病の治療に広く使われています。副作用には眠気や体温異常、動悸などがあります。

フルメジン(フルフェナジン)

主に統合失調症や躁病の治療に使用されます。ドパミンD2受容体を阻害することで抗精神病作用を示します。通常の投与量は成人で1日1mgから10mg程度であり、副作用には錐体外路症状や眠気が含まれます。

ピーゼットシー(ペルフェナジン)

統合失調症や躁うつ病の治療に用いられる抗精神病薬です。ペルフェナジンはドパミン受容体を阻害し、精神的な不安定さを改善します。通常の用量は成人で1日8mgから32mgですが、副作用としては口渇や便秘が報告されています。

ニューレプチル(プロペリシアジン)

不安感や興奮状態を軽減します。ドパミン受容体を阻害することで効果を発揮し、通常の用量は成人で1日4mgから16mg程度です。副作用には眠気や運動障害が含まれます。

ブチロフェノン系

セレネース(ハロペリドール)

セレネースは躁うつ病(双極性障害)や統合失調症に対して処方する薬です。脳内の神経伝達物質の働きを良くし、憂うつで落ち込んだ気分、意欲や行動の低下している状態を改善します。不安や緊張などの精神の不安定な状態を抑える働きがあります。強い不安や緊張感を和らげ、心の病気で起きる幻覚、妄想などを抑えます。副作用としては、振戦、筋強剛、アカシジア、錐体外路症状、不眠、焦燥感、パーキンソン症候群、流涎、寡動、歩行障害、仮面様顔貌があります。用法用量は、病気と症状によって異なります。

インプロメン(ブロムペリドール)

ブチロフェノン系抗精神病薬であり、主に統合失調症や急性の精神病エピソードの治療に使用されます。ドパミンD2受容体を強く遮断することで、陽性症状(幻覚や妄想)を軽減します。副作用としては、錐体外路症状や高プロラクチン血症が見られることがあり、長期使用による遅発性ジスキネジアのリスクもあります。用量は患者さんの状態に応じて調整され、通常は1日あたり数mgから始め、必要に応じて増量します。

トロペロン(チミペロン)

抗精神病薬の中でもブチロフェノン系に分類され、主に統合失調症の治療に用いられます。抗メタンフェタミン作用や抗アポモルフィン作用を持ち、特に幻覚や妄想状態、自発性欠如に対して効果があります。副作用には、錐体外路症状や眠気が含まれますが、これらは他の抗精神病薬と比較して軽度であることが特徴です。通常の用量は1日0.5~3mgから始まり、最大12mgまで増量可能です。

ベンザミド系

ドグマチール、アビリット(スルピリド)

ベンズアミド系抗精神病薬で、主に統合失調症やうつ病の治療に使用されます。この薬剤は低用量で抗うつ効果を示し、高用量では抗精神病作用を発揮します。副作用としては、高プロラクチン血症や眠気が報告されていますが、錐体外路症状は比較的少ないとされています。一般的な用法としては、成人に対して1日300~600mgを分割経口投与します。

バルネチール(スルトプリド)

ベンズアミド系抗精神病薬であり、統合失調症や躁病の治療に使われます。比較的副作用が少なく、高プロラクチン血症が主な懸念事項です。一般的な投与量は1日300~600mgであり、患者さんの状態によって調整されます。特に興奮状態や幻覚・妄想に対して効果的とされています。


非定型抗精神病薬

SDA(セロトニン・ドパミン拮抗薬)

リスパダール(リスペリドン)

強い不安や緊張感を和らげ、心の病気で起きる幻覚、妄想などを抑えるお薬です。不安や緊張などの精神の不安定な状態を抑える働きがあります。副作用としては、アカシジア、不眠症、便秘、易刺激性、流涎過多、不安、筋固縮、無動、ジスキネジー、食欲不振、悪心があります。用法は1日2回に分けて口から服用します。

インヴェガ(パリペリドン)

インヴェガは統合失調症に対して処方する薬です。強い不安や緊張感を和らげ、心の病気で起きる幻覚、妄想などを抑える作用があります。不安や緊張などの精神の不安定な状態を抑えるための薬です。副作用としては、体重増加、錐体外路障害、便秘、CK増加、肝障害、ジスキネジー、ジストニアがあります。用法は1日1回朝食後に口から服用します。

ルーラン(ペロスピロン)

ドパミンD2受容体とセロトニン5-HT2A受容体の両方に対して高い親和性を持ち、陽性症状だけでなく、陰性症状にも効果があります。従来の抗精神病薬に比べて副作用が少なく、特に錐体外路症状(EPS)が軽減されることが確認されています。また、治療抵抗性の統合失調症患者さんに対しても有効性が示されており、幅広い症状に対応可能です。新しいタイプの抗精神病薬として注目されています。

ロナセン(ブロナンセリン)

第二世代の抗精神病薬であり、ドパミンD2受容体とセロトニン5-HT2A受容体を強力に阻害します。統合失調症の陽性症状に対して高い効果を発揮します。また、陰性症状や認知機能の改善にも寄与することが期待されています。ロナセンは副作用が少なく、特に代謝への影響が軽微であるため、安全性が高いとされています。しかし、ドパミン遮断による副作用として錐体外路症状があらわれることがあります。服用時には食事の影響を受けるため、食後に服用することが推奨されています。

MARTA(多元受容体標的化抗精神病薬)

ジプレキサ(オランザピン)

多元受容体標的化抗精神病薬(MARTA)として知られ、多様な神経伝達物質受容体に作用します。主にドパミンD2受容体とセロトニン5-HT2A受容体を拮抗し、陽性症状だけでなく陰性症状や認知機能の改善にも効果があります。さらに、気分安定作用もあり、躁うつ病(双極性障害)やうつ病の治療にも使用されます。鎮静作用を持ち、不眠や衝動性のコントロールにも効果的ですが、副作用として体重増加や糖代謝異常が見られることがあります。

セロクエル(クエチアピン)

クエチアピンは統合失調症に対して処方する薬です。強い不安や緊張感を和らげ、心の病気で起きる幻覚、妄想などを抑えるお薬です。不安や緊張などの精神の不安定な状態を抑える働きがあります。主な副作用としては、眠気、口渇、頻尿、便秘、筋強剛、ジスキネジー、ジストニア、不眠、頭痛、目眩があります。用法は、1日に1〜3回にわけて口から服用します。

ビプレッソ(クエチアピン)

ビプレッソはクエチアピンの徐放錠で、躁うつ病(双極性障害)や統合失調症の治療に使用されます。脳内のドパミンやセロトニンのバランスを整えることで、強い不安感や意欲低下を改善します。特に躁うつ病のうつ症状に対する効果が高く、日本うつ病学会のガイドラインでも推奨されています。ビプレッソは徐放性のため、一度服用すると効果が持続し、副作用も少ないとされています。ただし、眠気が残ることがあるため、用量調整には注意が必要です。服用は就寝前に行い、食後2時間以上空けることが推奨されています。

シクレスト(アセナピン)

シクレストは統合失調症に対して処方する薬です。強い不安や緊張感を和らげ、心の病気で起きる幻覚、妄想などを抑えるお薬です。不安や緊張などの精神の不安定な状態を抑える働きがあります。主な副作用としては、眠気、口の感覚鈍麻、アカシジア、錐体外路障害、体重増加、浮動性眩暈、感覚鈍麻、ジスキネジー、便秘、高プロラクチン血症、食欲亢進があります。用法は、1日1〜2回舌下投与を行います。

DSS(ドパミン受容体部分作動薬)

エビリファイ(アリピプラゾール)

エビリファイは、広汎性発達障害(自閉症スペクトラム(ASD))、うつ病、双極性感情障害(躁うつ病)、統合失調症に対して処方する薬です。脳内の神経伝達物質の働きを調整し、気分を安定させる働きがあります。それによって、意欲が高まり、気分が楽になります。強い不安や緊張感を和らげ、心の病気で起きる幻覚、妄想などを抑えます。また、抑えることのできない感情の高まりや行動を抑えます。イライラしたり、かっとなりやすい症状を改善します。副作用としては、アカシジア、不眠、振戦、不安、眠気、流涎、体重増加、ジストニア、CK上昇、肝障害があります。用法用量は病気によって異なります。

レキサルティ(ブレクスピプラゾール)

レキサルティは統合失調症に対して処方する薬です。強い不安や緊張感を和らげ、心の病気で起きる幻覚、妄想などを抑えます。不安や緊張などの精神の不安定な状態を抑える働きがあります。副作用としては、アカシジア、錐体外路症状、高プロラクチン血症、頭痛、不眠、ジスキネジア、ジストニア、便秘、糖尿病、眠気があります。用法用量は症状に応じて調整します。

その他

クロザリル(クロザピン)

治療抵抗性統合失調症に対して特に効果があると認められている抗精神病薬です。他の抗精神病薬を十分な量と期間使用しても改善が見られない患者さんに使用します。統合失調症の主要症状である幻聴や妄想だけでなく、イライラや興奮などの症状にも効果を示します。
ただし、クロザリルの使用には厳格な管理が必要です。主な副作用には、無顆粒球症(白血球減少)、心筋炎、高血糖などがあり、これらは重篤な状態を引き起こす可能性があります。そのため、治療開始前には血液検査や心電図検査が行われ、服用中も定期的な血液検査が義務付けられています。必要な患者さんには、連携する医療機関をご紹介いたします。

ラツーダ(ルラシドン)

第二世代の抗精神病薬で、2013年には双極性障害のうつ状態への適応が認められました。主にドパミンとセロトニン受容体に作用し、過剰なドパミン遮断による副作用を軽減しつつ、幻聴や妄想といった陽性症状の改善が期待されます。さらに、陰性症状や認知機能障害の改善にも寄与し、不安や衝動性を和らげる効果もあります。服用は食後に行う必要があり、食事によって吸収が大きく変わるため注意が必要です。副作用は比較的少なく、特に代謝への影響が軽減されている点が特徴です。


漢方薬

半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)

半夏厚朴湯は、不安や緊張、イライラ感、抑うつ、不眠、神経性の動悸などの症状に効果がある漢方薬です。特に、不安症状に伴う喉の圧迫感や詰まり感を和らげるため、パニック障害の治療にも用いられます。半夏厚朴湯は心身の緊張を緩和し、リラックスさせる作用があるため、ストレスの多い現代社会で広く利用されています。服用することで、心の安定を図ることができるため、精神的な不調を抱える有用な選択肢となります。

酸棗仁湯(サンソウニントウ)

酸棗仁湯は、古くから睡眠薬として知られ、精神を落ち着かせて安らかな眠りを誘う効果があります。特に、思い悩んで眠れないタイプの不眠症に適しており、一日数回服用することで効果を発揮します。心の不安定さから来る睡眠障害に対して非常に有効であり、ストレスや過度な思考によって眠れない人々にとって重要な治療手段となります。心身のバランスを整えることで、より良い睡眠環境を提供します。

加味逍遙散(カミショウヨウサン)

加味逍遙散は、自律神経失調症状や更年期障害に伴う不安、不眠、イライラなどの症状を和らげるために用いられます。冷えのぼせや生理不順にも効果があり、特に女性の精神神経症状に対して高い効果が期待されます。加味逍遙散は心身の調和を促進し、ストレスによる身体的な不調も改善することができます。そのため、心身ともに健康を取り戻すことができるとされています。

抑肝散(ヨクカンサン)

抑肝散は神経の高ぶりを鎮める作用があり、イライラ感や不眠などのメンタル症状だけでなく、子どもの夜泣きやひきつけにも使用されます。体への負担が少なく、高齢者や子どもにも安心して使用できるため、多様な年齢層で利用されています。抑肝散は心を落ち着ける効果があり、不安感や緊張感を軽減します。